
COLUMN
コラム2025.09.09
脱炭素社会の実現に向けて、あらゆる産業でカーボンニュートラルへの対応が求められる中、エネルギー消費の多い製造業はその中心的な存在となっています。CO₂排出量の削減は企業の社会的責任にとどまらず、経営を左右する重要な課題です。
今回の記事では、製造業におけるカーボンニュートラル実現に向けた主な取り組みと、現場で直面している課題について解説します。
製造業に携わる方で、カーボンニュートラルに関心のある方はぜひ参考にしてください。
製造業におけるカーボンニュートラルに向けた主な取り組みを「エネルギーの効率化」「再生可能エネルギーの導入」「資源の循環利用」に分けて解説します。
カーボンニュートラルを実現するための第一歩は、エネルギーの効率的な利用です。老朽化した設備を高効率な機器へ更新することで、消費エネルギーを削減しつつ生産性の向上も期待できます。例えば、インバーター付きモーターや高効率ボイラーへの交換は、稼働状況に応じた最適制御を可能にし、大幅なエネルギー削減につながります。
また、空調や照明などの設備についても、省エネ性能の高い機器の導入や、自動制御システムによる稼働時間の最適化が効果的です。さらに、エネルギー管理システム(EMS)を活用すれば、リアルタイムで使用状況を可視化し、無駄なエネルギーを把握・改善することが可能になります。
そうした取り組みは、工場の規模や業種を問わず導入しやすく、照明のLED化や機器・設備の更新だけでも、年間の電力使用量を数十%削減できることがあります。段階的な改善を重ねることで、無理なくカーボンニュートラルに向けた取り組みが可能です。
再生可能エネルギーの導入も製造業にとって重要な鍵となります。特に、太陽光発電は初期投資の低下や技術の進化により、多くの工場や事業所で導入が進んでいます。屋根や遊休地を活用した自家消費型の太陽光発電は、電力コストの削減に加え、CO₂排出量の削減にも直結します。
加えて、バイオマスや地熱、小水力などの地域資源を活用することで、電力の地産地消が可能となり、地域との共生やエネルギーの安定供給にもつながります。導入が難しい場合には、再生可能エネルギー由来の電力を購入する「グリーン電力証書」や「非化石証書」の活用といった方法もあり、環境配慮の姿勢を対外的に示す手段としても有効です。
製造業における再生可能エネルギーの導入は、CO₂削減に加え、企業の価値向上や取引先からの信頼獲得にもつながるため、中長期的な経営戦略の一環として検討すべき取り組みです。
カーボンニュートラルの実現には、製造過程で使用する資源の「使い捨て」から「循環利用」への転換が欠かせません。製造業では原材料や副産物、廃棄物など多くの資源が関わるため、再利用やリサイクルの仕組みを取り入れることで、資源の有効活用とCO₂排出量の削減を同時に図ることが可能です。
例えば、製品の製造過程で発生する廃材や熱エネルギーを再利用する「ゼロエミッション」の取り組みや、再生材を原料として使用する設計などが挙げられます。また、包装材の簡素化や再生可能資材への切り替えも、環境負荷の軽減につながります。
さらに、サプライチェーン全体での資源管理や情報共有が進めば、より高度な資源循環モデルの構築も可能です。それにより企業は、環境対応とコスト削減の両立、さらには持続可能な生産体制の確立を実現できます。
カーボンニュートラルの実現は製造業にとって重要な目標である一方、達成に向けては様々な課題も存在します。まず大きな障壁となるのが資金面の問題です。高効率設備や再生可能エネルギーの導入には多額の初期投資が必要であり、特に中小企業にとっては負担が大きく、導入の意思があっても踏み出せないケースが少なくありません。
また、取り組みの成果が見えにくいという点も課題です。CO₂削減効果やエネルギー効率の向上は数値として現れにくい場合があり、社内外での評価や継続的な取り組みのモチベーション維持が難しくなることがあります。
社内の知識や人材の不足も深刻です。カーボンニュートラルに向けた計画立案や効果的な運用には専門的な知識が求められますが、それを担う人材が不足している企業も多く、外部の支援に依存せざるを得ない状況です。
それらの課題を克服するには、国や自治体の補助金制度の活用、他企業との連携、外部コンサルの導入など、段階的かつ現実的な取り組みが求められます。
製造業でのカーボンニュートラルに向けた取り組みの一環で空調設備の更新を検討されている場合には、ぜひ「リキッドデシカント空調機」の導入をご検討ください。
リキッドデシカント空調機は、従来の空調方式とは異なり、液体調湿剤を使って空気中の湿度を効率的にコントロールする次世代型の空調機です。冷温水を活用した中温域での調湿運転により、快適な室内環境を保ちながら、省エネ性と運用コストの低減を実現できます。
加湿機能では、調湿液に除菌作用があるため、清潔かつ衛生的な加湿が可能。雑菌の繁殖を抑えつつ、蒸気式と同等の性能を発揮します。除湿機能においては、低温排熱や自然熱を活用して空気中の湿気を効率的に除去できるため、CO₂削減に大きく貢献できます。
ヒートポンプや廃熱、自然エネルギーなど、多様な熱源に対応できる柔軟な設計も特徴のひとつです。大型施設向けの高機能モデルから、小規模空間に対応したコンパクトタイプまで、ラインナップも豊富に揃っており、用途や施設規模に応じた最適な選択が可能です。
製造業におけるカーボンニュートラルの実現には、エネルギーの効率化や再生可能エネルギーの導入、資源の循環利用といった多様な取り組みが欠かせません。それらの対策は、CO₂排出量の削減だけでなく、コスト削減や企業価値の向上にもつながります。
一方で、初期投資の負担、専門人材の不足、効果の見える化が難しいといった課題も多くの企業が直面しています。国や自治体の支援策を活用しながら、自社の状況に合った段階的な取り組みを進めていくことが重要です。持続可能な製造業の未来に向けて、戦略的かつ柔軟な対応が求められています。